「涯?」
その声で俺たちの方に振り返った。
「黎奈が退学させられるかもしれない」
「は?」
「えぇ!?なんで?」
皆から驚きの声が聞こえる。
いきなりのことで声がでなかった。
「詳しく話してくれ」
雷が立ち上がり俺たちがいるソファーまで来た。
涯も俺達全員の顔を見渡した後話しだした。
「さっきの職員会議の最後の話題で黎奈のことがでたんだ。
なんで学校に来ないのかってことが他の教師達は不思議に思ってるらしい。
風邪を引いたなら今日そう連絡がはいるはずだ。
でも連絡がなかった。
きっと風邪で通しきれないと黎兎のお母さんは思ったんだろう。
かといって入院してると伝えたら、それなりの診断書があるはずだし、
夏休み中に何かあって部屋に閉じこもってるなら親から電話の1本が入るはずだ。
他の理由だったとしても、それなりの“なにか”があるはずだ。」
確かに黎奈は閉じこもりでも入院してるわけでもない。
学校側からしたら何も連絡してこず休んでいるってことになる。
「それが何もないから退学させるって言ってるの・・・?
そんなの無茶苦茶じゃん!!」
「実はな、今年に入って学園近くで黎奈が怪我だらけで歩いている姿が何度か教師たちが見かけているらしい。
まるで喧嘩し終わったような姿みたいに・・・。
これは俺の勝手な想像だが、黎奈、俺達に内緒で1人で戦ってたんじゃないか?
夏休み前、そんなに闇族・魔族の存在を感じなかったしな・・・。」
嘘だろ・・・。
「そんな、黎奈ちゃんが・・・?」
「アイツなら有り得るよな」
炎虎の言葉に皆がそう思ったのか何も言わない。
「でも、それでなんで退学なの?」
「頻繁に傷だらけの姿を見られているんだ。
危ない奴らと関わってると思われても仕方ない。
それに夏休み明け、なんの連絡もなしの休みときた。
教師たちは、ますます怪しむだろう。」
確かにそうだ。
自分の学園の生徒がそんな奴らともし関わっていて暴力事件なんて起こされたら学校側としてはたまったもんじゃない。
退学か・・・。
「嫌だよ、そんなの嫌!」
天音が首を振りながら必死に訴える。
涯が怒ったのは黎奈を守るためだったんだ。
「大丈夫だ、今すぐにというわけではない。
ただ、このまま何も連絡しずに休み続けると危ない。
何か理由を考えないと。
理事長が納得する理由を」
俺も必死に考える。
黎奈の居場所がなくなるなんて嫌だ。


