急いで出入口を通り、階段を駆け下りる。 誘導に従って廊下を走り、競技場入口を目指す。 目の前が明るくなり…… 一面の緑が目に飛び込んできて…… その向こうに見てしまったんだ。 さっきの女性が彼に手を振って。 彼が優しく微笑んだ。 嫌だよ。 あんな笑顔、他の人に見せないで。 蒼の笑顔を独り占め出来るのはあたしだけなのに。 あたしだけの特権だと思っていたのに。 なのに、何で……