「碧、どうしたの?」 「本物?」 「何かの収録?」 いつの間にかあたしたちは囲まれていて。 携帯で写真を撮られたりして。 蒼の顔は明らかに引きつっていた。 何だか入学式を思い出すな。 あの時も蒼は囲まれていた。 そしてあたしは手の届かない人だと思って悲しんだんだ。 でも今は…… 蒼があたしの手を握ってくれる。 温かい大きなその手で。 それが嬉しくて幸せで、あたしもぎゅっと握り返す。 蒼はいつものように学生に笑いかけ、こう聞いた。 「慎吾、どこにいる?」