「ほら」
少年はポケットに突っ込んでる片手と反対の空いた手を差し出した。
ニヤリと少女は満遍ない笑みを浮かべてぐいっと思いきり少年の手を引っ張った。
「うぉっ」
少年が体制を崩して少女の横に倒れた。
「・・・っ、何すんだよっ」
フードが取れた少年の顔は整った顔立ちだった。
クスクスと少女はおかしそうに笑って空を見上げた。
「ねぇ、魚は空を飛べると思う?」
少年も空を見上げて答えた。
「そんなのやってみないと分かんないさ」
それは少年の口癖だった。
「ありがとう」
想像もしてなかった言葉に少年は目を丸くして上半身だけ起こして少女を見た。
「ねぇ、君はどうして此処に来たの?」
「やらなきゃいけない事があるんだ」
「それは出来ない事?」
「やらなきゃいけない事とやりたい事が違うんだ」
少女は何度も頷いた。
「分かるっ、分かるよう!やりたい事があるけどやらなきゃいけない事をしないとそれに辿り着けないって感じでしょう?」
「うん、そんな感じ」
少女はばっと立ち上がって笑った。
「じゃあせめて、君がやらなきゃいけない事が君にしか出来ない事だといいねっ」
少年は目を細めた。