仰向けに倒れた少年の顔に雨が打ちつけた。
それは少年を見下ろすようにただ、呆然と突っ立った少女の涙だった。
「ど・・・う・・・して?」
冷たい地面の上で横たわる少年の耳に少女の僅かな声が届く。
「どうしてこんなことをしてまで生きないといけないの・・・」
しぼりだすような声。
少女は、その場に膝をついて崩れた。
少年は残った力を振り絞って返り血のついた少女の黒髪に触れた。
「いっそ誰かに殺して欲しいって思ったこともあるよ」
言葉を発するたび、頭の中が朦朧として少年の大切な何かが消えていくのが分かった。
「誰かを傷つけるのも、誰かを失うのも、自分が傷つくのも飽きて、いっそのこと死んでしまいたいって思ったこともあるよ」
少年の声は穏やかだった。
「俺は誰にも必要とされてなくて、生きてる意味も分からないまま、ただ生きてきただけだと思ってたこともあるよ」
少年は少女を優しい表情で見つめた。
「居場所が欲しかった」
少女は静かに少年の言葉に耳をかたむける。
「ありがとう」
クスリと少年が笑う。
「おかげでようやく居場所を見つけた」
「君の心に居場所を得られたから」
そうして少年の目が光を失って虚ろになっていった。