モノクロのチェス盤の上にはナイトとクイーンの駒が置かれていた。


そのチェス盤を挟んで向かい合って座る少年と男。





「もうそういうの辞めたんだよ」

少年は不機嫌そうに男を睨む。



「君には無理だろう」

男はそんな少年の視線を無視し、妖艶に笑む。



「そんなのやってみないと分かんないだろ」


「君は闇から抜け出せやしないよ」



男は黒いスーツの内ポケットから小型拳銃を取り出して手でくるくると弄び始めた。


「今までその手で何人殺してきた?」

「覚えてないさ」

「そう、君は覚えてないくらい沢山の人間を殺してきた。今さら何人殺したって同じだろう。・・・それとも、」





男はますます口を歪めて笑った。


囁かれた言葉。



それとも、





逃・げ・る・の・か。







「・・・・・・」

その言葉に少年は拳を握りしめるだけ。


「まぁ、いい」

男は少年に一枚の写真を手渡した。




「今回のターゲットだよ」



男はそれだけ言うと闇へと戻っていった。