自分の荷物を持って部室から出ようとすると、隠岐君に腕を掴まれた。 何事かと慌てて振り返れば、いつもの優しい隠岐君に戻っていた。 「喧嘩したわけじゃないから、部活以外でも話せるよ」 「うん。ありがとう」 ああ言ってはくれたものの、もう話さないことくらい分かっていた。 前みたいにはなれない。 戻れない。 そして隠岐君の言葉に、傷ついた。