台風は明け方には通り過ぎていた。 「風がまだ強いですね」 私は、マツイさんを送り出しながら言った。 「お前、ケータイつながらないんだけど」 「ああ…お金ないんで、プリペイドにしたんです」 マツイさんは、あの黒い目でじっと私を見た。 「ごめん」 「いいんですよ」 「今日、振り込むように言っておく。 今の番号教えて。あと新しい住所メールして」 「はいはい」