「アレは、コツだよ」 電車の中で、後ろから声が聞こえた。 ―アレは骨だよ― 骨壺は桐の箱に入れられ、見えないようにナイロンのバッグに入っていた。 でも膝から下せなくて…分かる人には分かっちゃうんだろう。 向かい合わせの座席だった。 前に座っている人が、居心地悪そうに体を動かした。 お父さん、ごめんね。 膝の上の骨壷は、揺れもせず、静かに座っている。