制服に着替えて戻ってくると、

ゴウは朝食の支度をしていた。



「その中に、おしぼりがあるし、顔拭いたらええわ」


おしぼり用の機械がある!

これ、なんて言うの?

つーか、一般家庭にあるもの?



「ゴウのお父さんて、何してる人?」

「お役人」



そういえば、このマンションの入り口に、そんなようなことが書いてあったような……


「お父さん、大物って感じだね」

「そう?化粧水つけなさいよ」

ゴウが、コットンに化粧水を出してくれる。

適当に顔へ塗りたくった。

すぐに隣の乳液に手を伸ばす。


「まだ塗ったらあかーん!」

「え?」

「アンタそんな一遍にベタベタ付けたらあかん。一つ一つ馴染ませてから付けるんよ」


噂には聞くけど、本当にそんな面倒な事をしてる人いるんだ……

左手を顔に押し当てて、浸透とやらを待つ。



華奢なフレームの掛け時計。

棚に並んだ洋酒の瓶。

アートなデザインの椅子。



立ち上がって、腰掛けてみる。

どう座れば落ち着くのか、よく分からない椅子だ。


「それ、叔母のデザインやねん」

「へぇ。デザイナーなんだ」

「デザイン言うより、現代アートやってはんねん」



家柄が違い過ぎる。

なんで、こんな人がうちの高校にいるんだ…?



「もう乳液つけてもええんと違う?」