ふぅっと息を吐き出し、ご老人の顔を思い浮かべてへにゃりと笑っている友人に向かって口を開いた。


「・・・・・・あのさ・・・幸せ?」


とりあえず、というように聞けば、彼女は完璧な笑顔を浮かべて言った。


「勿論!幸せよ。だって彼、優しくて素敵だもの。」


明るい声色。
整った綺麗な顔が、ぱぁっと輝く。



あたしはため息をついた。


本当、彼女には敵わない。

いや、彼女に敵う人なんていないだろうと思う。



天下無敵の変わり者。

無邪気で真っ直ぐで頑固で、どこか歪んでいる彼女に、誰も敵わない。



「あぁそう・・・。じゃあ、まぁ、頑張れば?」

「えぇ。まずは奥様と離婚して頂ける様に頑張るわ!
そうしたらすぐにあたしと結婚してもらうの。ふふふ。」

「・・・・・・・・・・ほどほどに、ね。」

あたしは苦笑いを零す。


98歳で、連れ添ってきた妻と離婚?

ないないないない。
というか、あってはいけないだろう。



でも―――

にこにこと笑う彼女を見ていると、彼女の言うと通りになってほしいと思うから、不思議だ。




「応援、しといてあげる。」

「ありがと!」


彼女は、ふんわりと優雅に微笑んだ。







*END*