その好戦的な笑みの相手は『世間様』なのだろう。



彼女はあたしの高校の時の友人であり、今日は2人とも暇だというから喫茶店でお茶をしているのだ。



にしても――。


何も分かっていないのだなと思い、あたしは密やかにため息をついた。



彼女は今ちょうど30歳だが、高校生の時と変わらず少し・・・いや、かなり抜けている。


『世間様』がヒソヒソ言うのは当然のことだろうに。



問題は、彼女の思いとかじゃなくて、彼女が好きになったのが妻も子も孫もひ孫いる98歳の老人だということだ。


いかにもよぼよぼで、明日にはぽっくり逝ってしまいそうなご老人だとお見受けした(彼女の携帯の待ち受け画面にて。彼女とそのご老人の熱いキスシーンであった)。



確かに彼女はご老人を愛しているのだろうし、ご老人の方の彼女を愛しているのだろう。

ご老人はとても人懐っこく見えて、好ましかったし。


恋愛に年齢など関係ないのだということも、分かっている。



だがしかし。

さすがにそれはないだろうと思わずにいられない。


何をどうしてそんなよぼよぼのご老人の家族をかき回そうとするのか。

だいたい、彼女が離婚した男は彼女と同い年のかなりイケメンであったはずなのに、一体全体何をどうしてそう好みが変わったのか。

というかそもそも、話は合うのか。



・・・・・・疑問点をあげればキリがない。





あたしはその突然の彼女の告白にかなり戸惑っている自分を察知し、落ち着くべくアイスコーヒーをストローから一口吸う。