梅雨の時期に傘を持っていないのは、確信犯です。



「…書店から出て、雨ひどいなって思ってたら知莉ちゃんが通りかかって。
相合い傘できるチャンスだったんだよ。
そんなの逃すわけ、ないじゃん。

僕、あのとき傘たたんで鞄にいれてたから、気づかなかったんでしょ。」



どきどきと背中に心臓の音が伝わってくる。

…私のどきどきだけじゃない。



これは、きっと。


良樹の心臓の音だ。