【隼世side】



有り得ない。


今日は4月1日のエイプリルフールでもないはずなのに。



5月の生暖かい風が俺の頬を掠める。


体育館裏には、ただ呆然と立ち尽くす俺と俯いたままの茉璃。


たった数秒前に言われた言葉。


溶けることなく突き刺さってる。



「別れて下さい……」



また繰り返されるさっきと同じ言葉。


嘘だろ?


ここ何日間かで、俺茉璃に嫌われるようなことしたか?


心当たりがなんもねぇ………。



「変な冗談言うなよ……」

「本当です…」

「お前が嫌だって思うとこ全部直すし謝る。だから……離れんなよ」


嘘だ、って信じ込みたくて。


震える指先で茉璃の小さな体を力いっぱい抱きしめた。


だけど─────



「有阪くんと付き合ってるの…!」



大好きな子から、大好きな声で言われた残酷な現実。


なんでアイツ?


ついこの前まで、俺だけだって言ってたじゃん。


頭がついてかない………。