「冗談かなァ?」
ユリはあたしの髪を器用にまとめ、ピンで留めながら呟く。
「コータ先輩て、あんなにモテるのに、高校に入ってから彼女つくってないんだよー」
「え。…マジで?」
意外すぎて、びっくりした。
ユリを振り返りかけて、前を向いていろと、強引に顔を戻される。
周りのみんなは知っていたようで、「中学の時はいたらしい」とか「意外に硬派なトコがイイ」とか頷き合っていた。
女慣れしていたみたいだから、きっと女をとっかえひっかえしてるんだろうなと、あたしは勝手に想像していた。
「そんな先輩が、自分から告ったのが美緒なんだよ? ぶっちゃけ嬉しいでしょ? 付き合いたいでしょ?」
「って言われても…」
なんでそんな人があたしを好きになんてなったのか、さっぱりわからないし。
嬉しいというより戸惑いの方が大きい。
あたしはそうして、代理の教師が来るまでしばらく、女子たちから吊し上げのような目に合わされた。


