ユリが呆れ顔であたしの前に立った。
朝は下ろしていた髪をアップにしている。
「髪かわいい」
「そお? 美緒にもやったげる」
「えぇ? あたしはいいよ。髪の長さも足りないし」
「ピン使えば大丈夫。ほら、むこう向いて」
強引に窓の方を向かされてしまい、あきらめてユリの好きにさせることにした。
窓の外は快晴。
もう九月も終わるのに、まだまだ夏が残っている。
制服も冬服に変わる時期なのに、嫌になるな。
「ねぇ美緒~」
「んー」
「あのさ…朝、コータ先輩と喋ってたってホント?」
あたしの髪をとかしながら、ユリがそんなことを訊いてきた。
ちょっと会話を交わしただけのに、もう広まってるの?
「まァ、喋ってたっていうか…」
「喋ってたんだ!? 何喋ったの? もしかして、また告られたっ?」
「ち、ちが…」
声が大きいよユリ…。
近くにいた女子たちが一斉に振り返り、あたしの周りに集まってきてしまった。


