そうだ、思い出した。
葛城(かつらぎ)先輩だ。
身長が2m近くもあって、コータ先輩とは雰囲気が正反対な人。
ゴツくて厳つくて強面。
スポーツマンというよりは、ケンカの強そうな不良に見える。
でもユリ情報では、この人も女子に人気があるらしい。
「ま、仲良くしてやってくれよ酒井チャン。コイツしつこいけど、悪いヤツじゃねーから」
「葛城クン、しつこいは余計でちゅよ~」
「やめろバカ」
コータ先輩が腕で葛城先輩の首を絞め始めた。
子どもみたいにじゃれ合う二人に、仲が良いんだなと思う。
でも余計なお世話だ。
フラれてるんだからあまり関わるなって、どうしてコータ先輩に言わないんだ。
バスが着くとすぐ、じゃれてる先輩方は放っておいて、あたしはさっさと先に出た。
追いつかれてまた絡まれる前に走るかと考えたとき、
前方に見覚えのある背中を見つけて声をかける。


