「悩みがあったとしても、相談する相手は選ぶよ」
「そーんなァ。俺って結構頼りになる男なのにィ」
ふてくされた恭一がカウンターをバンバン叩く。
指にいくつもしてるシルバーアクセがカウンターに当たってうるさかったんだろう。
店長が眉間のシワを深くして、恭一の派手な頭に濡れたタオルを投げつけた。
子どもみたいに頬をふくらませ、恭一は床に向けてタオルをしぼる。
「別に悩んでないよ。気になってることはあるけど」
「気になってること?」
「うん。…恭一はさ、あたしに思い出してほしいんでしょ? アンタのこと」
「そうだよ? なんか思い出した?」
「ううん。……もしさ、あたしが思い出したらどうすんの?」
「へ?」
恭一はたれ気味の目を丸くした。
「それは……考えてなかったなァ」
眉を下げて、頭をかく。
思ってもない質問をされたというように、恭一は本気で困惑顔をした。


