恭一がよく来るという、小さくて古っぽいラーメン屋。
時間が時間だからか、それとも流行っていないのか、店内に客はまばらだった。
内装も簡素で昭和の雰囲気がある。
赤いビニールイスなんて、なかなか見ないよ。
「こんばんわー。おやっさん、チャーシュー麺2つね」
カウンターの端の席に並んで座る。
20才後半くらいにも見えるし、40才前半くらいにも見えるしかめっ面店長が、無言で一つ頷いた。
愛想がないけど、ラーメン屋のガンコ店主って感じでいいのかも。
汗の浮かぶ顔も、よく見ると男前だ。
その店長が湯気の立つ厨房で動いているのをぼんやり眺めていると、恭一がお冷やをくれる。
「美緒ちゃん、なんかあった?」
「…なんで?」
「元気ないからさ~。悩みがあるならお兄さんに話してごらん? ちょいちょいと解決してあげるよん」
親指を立てて得意のペ○ちゃんウインク。
怒りなんか蒸発しちゃう顔だ。


