しばらく二人で動かないでいたけど、あたしは時計を見て、矢沢エイジの手を放して立ち上がった。
恭子さんが下に行ってからけっこう時間が経ってる。
あまり長居するのは良くない。
「帰るの?」
矢沢エイジは目を擦りながら立ち上がった。
「送ってく」
どういうつもりでそう言ったのかはわからないけど、あたしは頷きも断りもしないで部屋のドアを開けた。
恭兄ちゃんの匂いが残る部屋。
最後に窓辺のギターケースと、机の恋の抜け殻を見て、部屋を後にした。
階段を下りると、居間の方から恭子さんが出てきた。
「そろそろお茶、持っていこうかなって思ってたの」
気を使ってくれたんだ。
「ありがとうございます。でも、今日はもう帰ります」
「ええ? 帰っちゃうの? エイジくんも?」
矢沢エイジはヘラっと笑って頭をかく。
二人が並ぶとやっぱり、よく似てると思った。
「美緒ちゃんを送ってかなきゃ。また来るね」


