そのストーカーをしてた男は、ナイフも持ってて。
恭兄ちゃんは胸のあたりを切り付けられたんだって。
聞いただけで鳥肌が立った。
「大丈夫だったの?」
「何針か縫ったけどねぇ。ナイフ見ても、キョンキョンは全然ひるまなかったよ。それよりストーカーが憎くてしょうがなかったみたい」
美緒ちゃんの為なら、命をかけちゃえる男だったんだよ。
矢沢エイジは冗談じゃなく真面目に言った。
胸を切りつけられても、恭兄ちゃんはストーカーに向かっていって、素手でボコボコに殴ったんだって。
「俺が止めても、なかなかアイツは相手を放さなくって。…あれが恋じゃなくて、なんなのさ」
「………もういい」
あたしはもう一度強く、矢沢エイジの手を握り締めた。
「もういいよ……」
恭兄ちゃん。
アナタがいま、どこからかあたしたちを見ているんだとしたら。
どんな顔で見てるのかな。
バカな奴らだって、笑ってるかな。
ううん、きっと…
きっと眉間にシワ寄せて、呆れてるね。


