でも、実際はちょっと違ってた。
あたしが腹違いの兄、『深田恭一』の存在を思い出してもしばらく、この男はあたしの傍にいた。
あたしの傍で、兄貴の役を続けてた。
どうして?
そんなあたしの心の声が聞こえたみたいに、矢沢エイジはあたしから目をそらして、ゆっくりと口を開いた。
「美緒ちゃんが兄貴の存在を思い出したら、そこで終わりになるはずだった。キョンキョンともそう約束してたし、ハルカとミッキーにもそう話してたんだ。なのに……俺は、約束を破った」
キミを、好きになってしまったから。
やめて。
やめてよ。
捨てたはずの恋が、
ゴミ箱の中へ落ちて行った恋がいま、この部屋の机の上に戻ってきていたように。
あたしの中にも捨てたはずの気持ちが戻ってきてしまう。
「美緒ちゃんを好きになって、美緒ちゃんを抱きしめて、美緒ちゃんに……キスまでした」
その時の映像が、動揺が、切なさが、甘い気持ちがよみがえる。
恋が、戻ってくる。


