それまで以上に遠くから、あたしを見るようになったらしい。
あたしに自分の正体を知られることを警戒したのか。
それとも、自分の中の感情を警戒したのか。
矢沢エイジも、そこは自分の推測でしか判断できないみたいだった。
「でさ、もらったハンカチをどうするのかと思ったら、ソレ。お守りみたいに大事にしてたよ」
ギターケースに結ばれたハンカチ。
全然汚れてなくて、綺麗に扱われてたのかなって思った。
「あー、コイツやばいんじゃないかって心配したりしたけど。いまはキョンキョンの気持ちがよくわかるよ」
そう言った矢沢エイジの首元には、去年あたしがあげたマフラーがかけられている。
それがどういう意味かは、考えないようにした。
そこまで考えられるほど、いまのあたしに余裕はないよ。
「それからさ、キョンキョンがメンバーに入ってすぐ、ウチのバンドは人気になって。
ライブも大盛況で、ファンもたくさんついてさ。上手くいきすぎてこわいくらいだったけど、メンバー全員がメジャーなんて夢じゃないって感じてた」
そこまで言って、矢沢エイジの表情から明るさが消え去った。


