自分の気持ちの揺れにいっぱいいっぱいで気付かなかったけど、矢沢エイジも一緒になって泣いてたらしい。

あたしが涙を流したまま振り返ったら、慌てて目をこすって、ちょっと困ったみたいに笑った。


「ほんとに頑固な兄妹なんだから…困っちゃうね」

「……ごめん」

「やだなあ。美緒ちゃんが謝るなんて、調子狂っちゃうよ」


わざとらしく明るく言って、矢沢エイジはあたしをベッドに座らせた。

自分も横に座って、疲れたように、けどどこかほっとしたようにため息をつく。


「全部、バレちゃったねぇ」


切なげに、けど肩の荷が降りたって様子の男は、すっきりした顔をしてた。

コイツはコイツでたくさん悩んで、つらい思いして、葛藤も多かっただろうな。


「ごめんね、美緒ちゃん。…ごめん、恭一」


恭子さんと同じように謝って、矢沢エイジが黙り込む。

あたしにはもう、この男を責める気持ちはなかった。

むしろ感謝しなきゃいけないんじゃないのかって思う。

だって、他人のあたしにコイツは、夢を見せてくれた。