もっと早く、見つけたかった。

出来るならあの時あの電車の中で。

戻らない時間を憎んでしまいそうになった時、下から階段を駆け上がってくる足音が響いて、

直後、勢い良く部屋のドアが開かれた。





「美緒ちゃん……っ!」





もう二度と聞くこともないだろうって思ってた声が背中にかけられて、

次の瞬間には、背後から強く抱きしめられていた。

ギターを抱くあたしをそのまま包む長い腕は、間違えようがない。

息を切らして、体を小刻みに震わせて、あたしの肩に顔をうずめた男は苦しそうに囁いた。


「どうして来ちゃったの…!」


どうして、どうしてって、矢沢エイジは何度も繰り返した。

そんなの決まってるじゃないか。

会いたかったからだよ、バカ。

そう言いたかったのに、出てくるのはやっぱり、涙ばかりで。

兄の腕じゃなく、兄の親友の腕の中で、あたしは声が枯れるまで泣いた。

ようやく妹になることが、出来たような気がした。












恭兄ちゃん。

あたしはあなたを一生許さない。

だから、一生あなたを想ってる。