追わなくていい、追い払ってくれただけで充分だからって。
それで…
その人の顔から血が出てて、鞄が当たったからだってすぐ気付いて、
それであたしは、持ってたハンカチを渡したんだ。
『血、出てますよ。使ってください』
そんなようなことを言ったんじゃなかったかな。
相手の人はちょっと挙動不審で、目をキョロキョロさせて、あたしの方を直接見ようとはしなくて、助けてくれたけど変な人だなって思ったような。
あれが、恭兄ちゃんだったなら…
一体いつから、あなたはあたしを見ていたの?
そんなに前からあたしのことを見つけてたなら、どうして声をかけてくれなかったの?
時間なら、たくさんあったじゃん。
命が消えるその時までの時間で、あたしに会うっていう選択をどうしてできなかったの?
矢沢エイジが言っていたことが、その理由なの?
あたしを好きだっていう、ふざけた理由。
どんな理由があったって、あたしはあなたを許せそうにないよ…


