階段を上りきり、右手奥にある部屋。
その扉の前で、恭子さんはあたしを振り返った。
「……きっと、あなたのことを考えてたのね」
寂しそうに笑って、恭子さんは扉を開けた。
少し冷たい空気が、部屋の中から流れてくる。
「あのコが生きていた頃のままにしてあるの。けっこう綺麗好きだったのよ」
恭子さんの言う通り、部屋はすっきりと片付いていた。
掃除は彼女がしてるんだろうけど、少ない家具の配置とか、本棚にある本の並びとか、
きっちりそろえられたCD、MDのラック。
飾り気のない感じがちょっと、あたしの部屋に似てると思った。
「……いいんですか? あたし、勝手に入ったりして…」
「なに言ってるの? 妹が兄の部屋に勝手に入ったって、誰も悪いと思わないじゃない」
普通のことでしょ。
そう言われても、うなずけなかった。
あたしは『深田恭一の妹』だっていう自覚が持てないから。
「お茶、入れてくるから。ゆっくりしてってくれたら、きっと恭一も喜ぶわ」
明るく言って、恭子さんは部屋を出ていった。


