不意に、強く抱きしめられた。
もちろん、恭子さんに。
お線香の匂いと、恭子さんの白いシャツから香る洗剤の匂い。
温かくて、柔らかい体。
あたしは力がどんどん全身から抜けていくようで、されるがまま彼女に身を預けた。
「ごめんなさい。何も、知らなかったのね…」
恭子さんの声も震えてた。
彼女の細い肩越しに見える仏壇。
こんな風な再会が待ってるなんて、予想もしてなかった。
涙が、出ない。
悲しみも感じていない自分がよくわからないよ。
けど、平静でいられてるわけじゃない。
これは、悔しさ?
許せないと思った。
「ごめんね…ごめん。あたし、なんて抜けてるのかな………」
謝られても、何も返せない。
「ごめんね、美緒さん……。ごめん、恭一………」
ひたすら謝り続ける恭子さんの腕の中で、あたしはじっと仏壇を睨みつけていた。
幽霊でもなんでもいい。
本人の顔を、思い切り引っ叩いてやりたかった。


