恭子さんは一瞬不思議そうな顔をした。
その彼女の表情に、あたしも引っかかりを感じる。
何か、ズレてるんじゃないだろうか。
あたしと恭子さんの間で何かが。
よくわからないけど漠然とそう感じた。
けど恭子さんは「まあいっか」ってすぐに笑顔になって部屋の扉に手をかけた。
「何にせよ、美緒さんが家に来てくれるなんて、こんなに嬉しい日はなかなかないもの。本当はもうちょっと早かったら最高だったんだけどね」
「え?」
「そんな贅沢言っちゃダメよねえ。来てもらえただけで感謝しなくちゃ」
言いながら、恭子さんがドアを開ける。
瞬間、中からふわっと嗅いだことのある香りがした。
嗅ぐと途端に、波立った心も静かに凪ぐような。
これはお香…
いや、お線香の匂い。
あたしは、部屋に入れなかった。
「恭一。美緒さんがアンタに会いに来てくれたよ。やったねぇ」
恭子さんは部屋の右に置かれた仏壇にロウソクを立てて、マッチで火をつける。
マッチに火が起こる瞬間の音が、やけに大きく聞こえた。


