恭子さんは可愛らしく口元に手を当ててクスクス笑う。
すごく綺麗な手だって、いま気づいた。
年齢よりずっと若く見える白くて細い手。
その手を飾るみたいな小さな爪は、柔らかいサクラ色をしていた。
「それもお父さんの真似なのよ。…あたしね、恋人にフラれた時、その人からもらった指輪を噴水の中に捨てたことがあったの。お父さんは真冬にその噴水の中から指輪を探して、このぬいぐるみの背中に隠してあたしにプレゼントしてくれたのよ」
「それは……」
お父さん、そんなことを…。
父親の甘酸っぱい時代の話を聞くのって、なんだかすごく恥ずかしい。
「その後美緒さんも知っての通り、あたしはお父さんから離れて、恭一を生んで、お父さんと再会して。その後ね、指輪をくれた元恋人とも再会したのよ。で、色々あってその人と結婚したの」
「え。じゃあ、いまの旦那さんて…」
「そうなの。でね、いまの旦那と結婚できたのは、この指輪のおかげなのよ」
そう言って、恭子さんは若々しい左手をあたしに見せてくれた。
そこには、銀色に輝く細い指輪が。


