あたしはお父さんの手を強く握り返して、また体を起こした。
本気だってわかってほしくて、真っ直ぐにお父さんの目を見つめる。
「留学したんだって」
「…留学? 恭一くんがか?」
「そう。でも留学先がわからなくて。もう日本には戻らないような話を聞いて、そんなのやだから。また会いたいって、思うから…」
お父さんは空いてる方の手を広げて、「ちょっと待ちなさい」ってあたしを止めた。
困惑が、さらに深くなったシワに表れてる。
「留学って……いつ行ったんだ? 去年の年末にはいただろう」
「え…」
「クリスマスイヴにお前が会ってたのが彼じゃないのか? ずいぶん真面目そうになっていたが」
違う。
それは三上くん。
お父さんは三上くんを深田恭一だって勘違いしてるんだ。
でも、それなら…それでいい。


