「フラれたくせにしつこい男とか思ってんのかな?」

「…なんで話しかけてくるんだろうとは思ってます。ってゆーか、できれば近づかないでください」

「うわっ。いまのはキたな。傷ついた」


コータ先輩は大げさな演技で胸を押さえ、よろけて見せた。

なんだろう…なんだかイライラするな。


「そういう意味じゃなくてですね。また変な噂が立つのは困るんで」

「ああ。俺もさ、そのことで酒井さんに話があってね」


…話?

あたしは歩くペースを落とした。


「話って?」

「いや、失敗したなと思って。まさかあんなに噂になるとはね」

「先輩、目立つから」

「キミもね。だからさ、俺らオトモダチになんない?」

「はい?」


どうしてそうなるの?

この人の思考回路、ちょっと狂ってるんじゃないだろうか。

あたしはまじまじとコータ先輩を見上げた。

もしかしたらこの人は、『恭一』よりも変わっているかもしれない。

思わず顔をしかめた。