ああ、そうなんだ。
やっぱりそうなんだ。
あきらめみたいな冷たい感情が、あたしの中に広がっていく。
嘘はたったひとつ。
そう矢沢エイジは言ったけど、それはつまりあたしにとって、
すべて嘘だったのと同じこと。
あたしの知ってる『深田恭一』は、すべてまやかしだったんだ。
アイツの行動も、優しさも、抱きしめてきた腕も、キスをした唇も…
好きだと囁いた声も。
はじめから、そんな男はどこにもいなかった。
矢沢エイジが演じてた『深田恭一』。
それが謎だらけのアイツだったんだ。
「………バカみたい」
あたしは矢沢エイジの手からすり抜けて、薄く笑った。
なんかもう、笑うしかなくて。
テーブル横のマガジンラックに目が止まる。
そこには出産育児関連の雑誌と、結婚式の情報誌がささってた。
「……結婚するの?」


