「ムリ。言えない。男と男の約束だもん」
「こんな時までふざけないで」
「美緒ちゃん。ふざけて言ってるんじゃないよ」
矢沢エイジはヘラヘラ笑いを引っ込めて、あたしの両手をキュッと握った。
大きな、あったかい手。
振り払えなくて、あたしはごまかすみたいに、シャツを握る手に力をこめる。
「俺がしゃべっちゃったら、キョンキョンの覚悟がムダになっちゃうから」
「…覚悟ってなに? わけわかんないよ。何で留学したの? こんなことするくらいなら、何で留学前に本人が直接あたしに会いにこなかったの? 何でアンタを代わりによこしたの?」
「…その答えも、手紙に書いてあるはずだよ」
「嘘つき。書いてなかった」
あたしが強く否定すると、矢沢エイジは一瞬、泣きそうな顔をした。
けどすぐにまた、へらっと頬を緩める。
何かを隠すみたいに。


