避けられてるわけじゃない。

ただ、あたしが作った心の壁みたいなものを、彼は敏感に察してくれたんだと思う。

理由は、バレンタインデーのあの出来事。


「あっ。美緒~、北見先輩だよ」


窓から外を見ていたユリが手招きする。

横に並ぶと、友だちと一緒に生徒玄関に向かう先輩の姿が見えた。


「ねぇ美緒。北見先輩ってコータ先輩とどうなってんの?」

「さあ…どうなってんだろね」

「知ってんでしょォ? はぐらかさないでよ~」

「まあ、付き合ってるかどうかは置いといて。上手くはいってるんじゃない?」


あたしの答えに、ユリは思い切り不満そうな顔をする。

そんな顔されても、本当にそこまでしか知らないんだけどな。

詳しく聞こうとは思わない。

二人が幸せそうならそれでいいから。