広い緩やかな坂道を、ゆっくりと登っていく。
道路沿いにはおしゃれな雰囲気のカフェとか花屋とかがあって、住みやすそうな場所だと思った。
お店の窓やウェルカムボードには、バレンタインの企画かハートの飾り付けがされていて、カップルも多い。
日本でいちばん、愛が手渡される日。
「……あれ、かな」
坂を登りきって少ししたら、黄みがかった白い外壁のマンションが見えてきた。
六階建てで横に長い、古くも新しくもなさそうなマンション。
入り口でマンション名を確認したら、間違いなかった。
メモにはここの三階、三○五号室と書かれてる。
緊張しながら中に入って、オートロックとかじゃなかったことにホッとした。
三階なら、階段で行ってもいいか。
なんていうか、じっとエレベーターを待っていられなくて、あたしは脇にあった階段を上った。


