「兄さんがICUから出られたよ」
昼休み、食事のあとに図書室に三上くんと来た。
自主的に登校した3年生がちらほらいる中、小声で彼がそう言った。
「本当? じゃあもう大丈夫なんだね。よかった…」
「うん。まだしゃべれないけど、意識ははっきりしてるよ」
「そっか。面会はできる?」
三上くんは苦笑いする。
「できないことはないけど……見舞いはね。気持ちは嬉しいよ、ありがとう」
「何かまずいの?」
「まずいっていうか、調子に乗るだろうから俺が嫌なんだ」
三上くんの言っている意味がわからなくて、あたしは首を傾げる。
調子に乗るって、お兄さんが?
「いいんだよ。わからなくて」
今度は優しく笑って、彼は開いていた問題集に目を落とした。
すっかり以前の三上くんに戻っている。
落ち着いていて、穏やかで、ちょっとのことでは動じない、大人な三上くん。
でも少し、あなたは優等生すぎるよ。


