あの小さなラーメン屋の奥で、アイツはあたしにこう言った。


『好きになって、ごめん』


その声は震えていたけど、はっきりとそう言ったんだ。

手紙の途切れた部分につづく言葉は『好きだった』とかだと思う。

なのに手紙では『たぶん、きっと』って。

アイツの言っていた『好き』が、兄妹としてのそれじゃないことはさすがにわかった。

あたしの『好き』と、そう大差ないってことも。

でも何かが違う。

何かが噛み合わない。

あたしの中の奥底で、ずっと形にならずにゆらゆらと漂っていたある考えが、少しずつ成長しながら浮上してきてる。

まだはっきりとは、していないけれど。

この手紙が引き金だ。

こわい。

知るのがこわいけど、また追いかけたくなっている。

でも躊躇いが大きすぎて、踏み出せない。








あたしにはいま、大切な人がいる。