あたしはちょっとびっくりして、ユウナ先輩の顔をまじまじと見る。


「え…まだ付き合ってないの?」

「まだって何よ。付き合えるワケないじゃん」


先輩は小さな唇を尖らせる。

ワケないじゃん、なんて言うけど、学校では大体の生徒が、ユウナ先輩とコータ先輩は付き合ってると思ってるみたいなんだけどな。

昼休みもよく一緒にいるし、仲良しだし。


「じゃあバレンタインに告白すればいいじゃないですか」

「…しない」

「どうして?」

「言ったじゃん。あたし1回フラれてんだよ。いまの関係でもう充分」


少しだけ、さみしそうにユウナ先輩が笑う。

これはコータ先輩からいくしかないんだろうな。

コータ先輩も早くしちゃえばいいのに。

ふたりが両想いだっていうのは、誰の目にも明らかで。

コータ先輩、大切すぎてなかなか言い出せないとか。

だったらいいなと、ユウナ先輩の綺麗な黒髪を見ながら思った。