アンタはもう出会った頃のようにヘラヘラ笑わないの?

くだらない冗談ばかり言って、あたしを笑わせてくれないの?


「ずっと……美緒ちゃんを見てた」


ふざけたウィンクで親指立てて、


「再会は、キミが知るよりもずっと前だった…」


底なしに明るい声で、


「俺は……キミがずっと好きだったんだよ」


大きな身振り手振りで、


「だから俺は、日本を離れるよ。わかるでしょ? 美緒ちゃん…」


お疲れさまって、あたしを迎えてよ。

明日も、明後日も、ずっとずっと。

それだけでいいの。

それだけだから、つらいけど。

あたしも同じ痛みを感じているから。


「それが真実。それだけで、充分だよね…」


あたしの手を放し、立ち上がる恭一。

ぬくもりが、そばを離れていく。






「…さよなら、美緒ちゃん」








そしてあたしは部屋に一人きりになって。

最後に流れた涙は、ひどく冷たかった。







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