ふと思った。
あたしはここで、ずっと口に出来ずにいた言葉を使うべきなのかもしれないと。
『お兄ちゃん』
そう呼ぶべきなんじゃないだろうか。
あたしの為にも、恭一の為にも。
でも、
簡単にそう呼ぶには、あたしにはあまりにも引っかかっていることが多すぎて。
それにこの男を兄と呼ぶなんて、不自然すぎる。
あたしの中ではいまだに、チャラいヘラ男だから。
「恭一」
結局またそう名前を読んで、あたしは恭一の横に腰を下ろした。
恭一はピクリとも動かないで、うつむいたまま。
寝てるのかと思ったけど、あのたれ目はちゃんと開かれていた。
久しぶりに近くで見るその顔は、ずいぶんやつれて様変わりをしていた。
頬が少しこけて、目はひび割れた唇のように乾いている。
目障りなくらいに強く輝いていた精気はどこにいったの?


