久しぶりに訪れた、遅くまで営業している小さなラーメン屋さん。
黒地の暖簾をくぐると、濃いニンニクのいい香りに包まれる。
「おやっさん。俺チャーシュー麺ね」
あたしを奥に促しながら、ミッキーさんがカウンターの向こうにいる店長さんに言った。
頭にタオルを巻いて、相変わらずのしかめっ面な店長さんは、他の少ない客のラーメンを作りながらうなずいた。
一瞬目が合ったから頭を下げる。
相手はひとつ頷いただけだった。
「美緒ちゃんがおやっさんに気に入られてるのって、本当だったんだねー」
「え?」
「いまのおやっさんの顔。すごい緩んでたじゃない」
…緩んでた?
どこがどう緩んでたんだろうか。
「じゃ、俺はこっちでラーメン食べてるから」
ごゆっくり。
彼はあたしを、店のいちばん奥にあるドアの前に立たせてニコリと微笑んだ。


