学校が終わって急いで病院に行くと、いつものベンチには三上くんと、あの若すぎるお父さんの姿しかなかった。


「三上くん」


声をかけると、似ていない親子は同時にあたしを見た。

お父さんの方は軽く会釈してすぐに視線をそらす。


「酒井さん」

「お兄さん、目を覚ましたって?」

「うん、一度ね。いまはまた眠ってるよ」


ガラスの向こうに目をやる三上くんは、いつもの三上くんだった。

落ち着いていて、穏やかで、凪いだ湖面みたいに静かな彼の様子に、ほっとした。


「良かった…。もう、大丈夫なんだよね?」

「いや、まだ安心はできない状態なんだ。もう一度手術があって、それが終わって容態が安定したら、ICUから出られるだろうってさ」

「そうなんだ。…あの人は、今日は来てないの?」


三上くんは首を傾げて、それから思いついたように頷いた。