まさかヤクザの車に乗る日がこようとは。
走り出したベンツの中、あたしはあまりの居心地の悪さに飛び降りたくなった。
運転しているのは、いかにもな千堂さん。
軽く挨拶をしたきり彼は貝のように口を閉じている。
そして隣りに座るのはヤクザの息子。
過度な美形で見かけによらず好戦的。
高級車の革張りシートは悪くない座り心地なのに、居心地が悪すぎる。
「なんでミッキーと連絡取り合ってるのさ」
ハルカさんが脚を組みながら、あたしを睨む。
「…ネックレスを探してて、たまたま会った時にちょっと」
「ウチのメンバーに関わるなって言ったはずだけど」
「ネックレスが戻ってくれば、もう電話をかけたりしません」
きっぱりと答えると、ハルカさんは細い眉を片方上げた。
「なるほどね」
そしてコートのポケットに入れたままだった、両手をあたしに差し出して見せた。


