驚きすぎて声が出てこなかった。
一体いつから後ろにいたんだろうか。
絶対歌っているのを聴かれた。
最悪だと思いながらイヤホンを外す。
「……いまの、ウチの歌?」
じっとあたしを見下ろしながら、ハルカさんが言った。
「…すみませんね、下手クソなのに歌って」
「好きなの?」
「は? ああ……はい。パパノエルの曲の中で、いちばん好きです」
「ふぅん…」
首に巻いたマフラーを少し緩めて、彼はあたしから視線をそらした。
その彼の横にゆっくりと、闇から出てきた黒光りするベンツが停まった。
ハルカさんはドアを開けて、あたしに顎で「入れ」と示す。
……このベンツに乗れって?
あたしも恭一と同じように、拉致監禁しようとでもいうんだろうか。
警戒して動けずにいたら、ブルーグレイの瞳に思い切り睨まれる。
「送るから早く乗ってくれる?」
イライラ全開の声に逆らったら、殺されるかもと思った。


