クインなんか特にじゃないかな。
ほらまた、ドアの向こうからカリカリと、爪で戸を引っ掻く音が聴こえてくる。
「三上くんをなぐさめたいんだね」
あたしはそう笑ったけど、三上くんは眼鏡をはずして目頭を指で押さえながら、首をふる。
そしてあたしをまた抱きしめて、囁いた。
「いいんだ…。酒井さんに、なぐさめてもらうから」
囁きは、視界が反転するのと同時だった。
気づいたらベッドの上で、ふかふかな毛布と三上くんの体に包まれていた。
心臓が、急激な活動をはじめる。
息すらまともにできなくなった。
「み……三上くん?」
「兄さんは死ぬかもしれない」
はっきりとした口調で三上くんは言った。
「……え?」
「そんな予感がするんだ」
あたしの首元に熱い吐息をかけながら、彼は呟く。
三上くんのなにか植物みたいな爽やかな香りに包まれると、自然と体のこわばりがとけていった。


