きっと三上くんのお母さんなんだろう。
確かに彼は、ご両親のどちらとも似ていない。
不意にお母さんがこっちを見た。
「あなたは、優のお友達?」
あたしはあわてて頭を下げる。
「はい。クラスメイトの酒井美緒です」
「酒井さん。はじめまして、三上優の母です。わざわざ来ていただいて申し訳ないんですけれど、優は家に帰したの」
お母さんはすまなそうに微笑む。
「家に、ですか」
「ここにはいたくないと言うものだから。…もし酒井さんにお時間があるなら、様子を見に行ってくださいませんか?」
なんだか様子がおかしかったようなので。
そう言われて、断る理由はなにもなかった。
断るなんて考えもしない。
あたしは返事も挨拶もそこそこに、急いで病院を出た。
走りながら三上くんに電話をかけてもつながらなくて、
遠くに見えたタクシーに大きく手を振って、あたしはひたすら彼の心配をした。
この時の気持ちには迷いなんてなくて、
ただ彼のもとへとしか考えられなかった。


