茜雲がゆっくりと色を変えはじめたころに、黙り込んでいた深田恭一はようやく口を開いた。
「美緒ちゃんは、動物園ていつぶり?」
「え? …たしか、小学校の遠足以来かな」
「そっか」
「うん。その前はよく、お父さんと一緒に来たりしたけど………」
あれ?
まただ。
また何か、頭に浮かびそうになって、消えた。
「深田恭一…」
「うん?」
「あたし…ここ、知ってる」
そりゃ知ってるよ。
だって小さい時によくお父さんと行った動物園だから。
この公園だって、動物園に来るたび寄ったはず。
でも、それだけじゃなくて、
何かが引っかかる。
引っかかって出てこないから、イライラした。
「美緒ちゃんさあ…」
深田恭一は背中を押す手を休めた。
「その、深田恭一って呼び方やめてみよっか」
「なにいきなり。…じゃあなんて呼ぶの」
別に深田恭一でいいのに。
そう言うと、ダメダメと首を振られた。


