動揺を悟られたくなくて、視線を外した。
「…比べるような、存在じゃないです」
「へぇ、そうなの」
「なんでそんなこと訊くんですか」
心を落ち着けて、視線をハルカさんに戻した時、
彼はもう笑っていなかった。
「キミ、ムカつくんだよね」
「どうしてそこまで…」
「俺は大切な物はひとつしか持たない」
中性的な声が、とげとげしく響く。
「そうじゃないと、必ず選択をしなきゃならなくなる時がくるからね」
「選択……?」
「残すか、捨てるか。たとえばこんな風にさ」
そう言って彼はおもむろに、ポケットから両手を出した。
男性にしては綺麗すぎるその手に握られていた物は、
左には何かが書かれたメモ用紙。
それから右には…
「なんで、あなたが……」
なくしたはずの輝きが、目の前で揺れている。
三上くんからもらったあのネックレスが、思いもよらない所から戻ってきた。


