ぞわぞわと体中の鳥肌が立った。

気持ちワル!

しかも『美緒ちゃん』?

馴れ馴れしいにもほどがある。


「意味わかんない。ってゆーか気安く呼ばないで」


シルバーアクセで重そうな手を叩き落とし、あたしは男の横をすり抜け走り出した。

ストーカーに構っている暇なんかない。

バイトに遅刻してしまう。

携帯電話を開いて時間を確認しようとしたら、


「美緒ちゃーん! まったねーーっ!」


後ろからそんな明るい声が上がった。

公共道路に響き渡るような大声に、ギョッとして少しだけ振り返ると、ヘラヘラ男がブンブンと子どものように手を振っていた。

ソイツの奇妙な印象だけは強く残った。



それがあたし、酒井美緒と、

ヘラヘラ男、深田恭一の出会い。

いや、再会だった。





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